早速ですが、ピクサーの新作『あの夏のルカ』を見ました!
主人公ルカの声は『ルーム』『ワンダー キミは太陽』のジェイコブ・トレンブレイ、ルカを人間の世界に導くアルベルトの声は『IT/イット それが見えたら、終わり。』のジャック・ディラン・グレイザーがあてています。『IT/イット』のときは高音早口でまくし立てるキャラだったジャック・ディラン・グレイザーくんが、すっかり「お兄さん」の声になっていて動揺しました。大きくなったね……。
以下、ネタバレありの感想です。
ビジュアル的には前作の『ソウルフル・ワールド』のリアル路線とは打って変わって、デフォルメされた可愛らしい世界観になっています。「月と少年」のエンリコ・カサローサが監督だけあって、幻想的で可愛らしいシーンが(主にルカの夢想として)随所に挟み込まれ、どのシーンもまるで絵本をめくっているかのような気持ちになります。ベスパに乗って月と泳ぐシーンの美しさ!
アルベルトとルカが友情を深める前半部分は、目に映るもの何もかもが興味深くてワクワクした子ども時代の感覚、目の前に広大な世界が広がっているという高揚感を思い出すようで、本当にまぶしい。
最初はアルベルトの方が「積極的に外に出て行く」方、ルカが「外に出て行くのに戸惑いがある」キャラクターだと思われていたのが、中盤からはルカがどんどん外の世界に踏み出してゆき、アルベルトが島にずっといたのは、過去に引きずられていたからだということが判明します。
でもさ~~ルカが外の世界へ踏み出すことができたのは、最初にそこにアルベルトがいて、手を引いてくれたからなんだよね。
冒頭が「人魚姫」(というか『リトル・マーメイド』)を思わせることも手伝って、ディズニー映画お得意の「異端の主人公が自分の正体を隠して生きる/迫害されるも、紆余曲折あって周囲に受け入れられる/本当の自分を受け入れる」展開かと思いきや、(もちろんその要素もあるのですが)、むしろ主眼は自分を引っ張っていく友達に憧れていたのが、いつしか二人の世界がすれ違い、そして別れ……という正統派ジュブナイル映画要素の方。
海の中しか知らなかったルカはポルトロッソを知り、学校を知り、ジェノバを知り、そして宇宙を知ってゆくのでしょう。これからルカの世界はどんどん広がっていくけれど、その世界の中心にはあの海の家と、あのちっぽけな島と、そしてアルベルトがいるから、どこにいたってアルベルトの声が聞こえるから、どんなに遠くに行ったって迷わないんだろうな……うう……(涙)
そして「自分を捨てた父親が戻ってくるかもしれない」という後ろ向きな思いから身動きを取れなかったアルベルトが、今度は別の理由でポルトロッソに留まることにしたのも好きでした。外の世界へ出て行く子どもも、ここに留まる子どもも、同じように祝福してくれるのが優しいね。