Red Notebook 『ミラベルと魔法だらけの家』SNS時代の子どもたちへ 忍者ブログ
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ディズニーとか映画とか。All I can say is this: listen to me. My name is Raito. That is not my real name.
2024年04月27日 (Sat)
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2021年11月27日 (Sat)
 『ミラベルと魔法だらけの家』を見てきました!(字幕鑑賞)
 最近映画に対するモチベーションが下がり気味なので情報をぜんぜん追えていなかったのですが、美しい色彩、楽しい音楽、魅力的なキャラクターで事前情報がほとんどなくても(当社比)楽しめました。(いつもはディズニーアニメーションの映画公開前に製作者インタビュー読んだりしてるので……)
 ディズニー映画の中で突出した傑作!というわけではないですが、最近のディズニーの安定したクオリティで、尺も短めなので安心して見ることができます。
 スクリーンで見るとアニメーションの繊細さを堪能できて良いですね。
 ミラベルのスカートの重なりや細かな刺繍など、服の質感に特に目を奪われました。ミラベルをはじめ女性キャラクターの衣装はデザインもとても可愛くて、Dハロの仮装人気が出そう。

 以下、ネタバレありの感想です。



 ラテンの国が舞台で家族の物語……ということで、私はピクサーの『リメンバー・ミー』がかなり苦手なので正直すこし警戒していました。あんな激ヤバ毒家族見せられて「やっぱり家族って素晴らしいよね(^_^)」ってオチにされてもね……。
 『ミラベルと魔法だらけの家』のおばあちゃんもコミュニティへの責任感や故郷を失う恐怖から家族に厳しくしていたのですが、『リメンバー・ミー』と違ってちゃんと反省してくれているのでそんなにモヤモヤはしませんでした。
 とはいえおばあちゃんのミラベルへの態度はけっこうひどくて、ミラベルが家出しないのが不思議なくらいだよ‼︎
 しかしそんな扱いをされても、やっぱり家族のことは嫌いになれないし認めてほしいんだよね。家族って愛でもあり呪いだなあ。
 始まる前の『呪術廻戦』の予告編で五条悟が「愛ほど歪んだ呪いはないよ」って言ってましたが、だいたいそんな感じですね。五条悟がだいたいまとめてくれてる。

 最終的な着地はピクサーの『ソウルフル・ワールド』と近いと言うか、「特別な才能がなくたって、あなたには価値がある」というテーマで、最近の流行りかな。
 すごい才能を持つ人がいくらでも見られるようになった大SNS承認欲求戦国時代、私自身も「私には何の才能もないなあ……」とか「世の中には面白い映画の感想を書く人がいるから私なんか何も言うことないなあ……」になりがちなので、今の子たちにはやはり必要なメッセージなのでしょうね。
 あとSNSってやっぱり、「何か意味のあることをしなきゃ」「いいこと言わなきゃ」ってなりがち。
「ギフトがある側のキャラクター」のストーリーは、同じSNSの例えだと、すでに何らかの才能で認められているアルファツイッタラーやインフルエンサーっぽい。SNSってやっぱり人を「コンテンツ化」しがちなので、自分を何らかのコンテンツ化して、そればっかりを求められてるように思っちゃうのも辛いよねとか。ネタツイがめっちゃバズってフォロワーが増えたからってべつに毎ツイートうまいこと言わなくてもいいし、神絵師と呼ばれてフォロワーに絵を投稿することを期待されてたとしても、絵を投稿することだけが君の価値じゃないいんやで、みたいな。(急に卑近な例で申し訳ない)

 ミラベルと長女・イサベラの関係は明らかに『アナと雪の女王』のエルサとアナの関係の変奏で(魔法の力を持つ姉と能力を持たない妹、イサベラのおもいっきりLet it goパロディな楽曲、ふたりのハグが絵面的にもエルサがアナを抱きしめるクライマックスシーンを連想させる…)、ブルーノのビジョンと合わせて、観客に『アナ雪』の連想からこの二人の和解が問題の解決に繋がるのでは……とミスリードさせる展開になっています。
 このへん、「過去のディズニープリンセス映画の展開をミスリードに使い、そこからの脱却を描いたアナ雪がミスリードに使われる側になったのか〜」という感慨がありました。もう7年前だもんね。
『ミラベルと魔法だらけの家』はプリンセス映画というわけではありませんが、マドリガル家はエンカントのコミュニティの首長的な立ち位置にありますし、前述のアナ雪への言及も含め、過去のプリンセス映画を彷彿とさせる箇所がいくつかあります。「魔法のかかった家」という設定も、『美女と野獣』の「魔法のお城」っぽい。
 次女・ルイーサは女性キャラクターには珍しい筋骨隆々キャラで、(「怪力」という設定の女性キャラクターはいても、見た目もマッチョなのは珍しい)、女性キャラクターの体型にバリエーションがあるのも嬉しい。ルイーサは力持ちだけど「強いキャラ」というだけではなくて、内面は繊細で傷つきやすいところがあるところも良かったですね。

 しかし『ビーボ』『イン・ザ・ハイツ』と最近リン=マニュエル・ミランダ作曲のミュージカル映画が続いていて、ちょっと食傷気味かも……。好きなんですけどね、リン=マニュエル・ミランダ。
加えて同じラテンの国を舞台にしたリン=マニュエル・ミランダ作曲のミュージカル・アニメーションだと、ミュージカルとしての楽しさ、「音楽」というものの扱いのうまさ、楽曲の印象に残りやすさは圧倒的に『ビーボ』に軍配が上がる。
 とはいえ"All of you"のナンバーでルイーサの「ときどき泣いちゃう」にミラベルとイサベラが「私も〜」って返すとことかもうマスクがベッシャベシャになるくらい泣いてんですけどね……。

 コロンビアの歴史に疎いので申し訳ないのですが、祖父母が村を追われたあたりは実際の歴史を基にしているのでしょうか?
 ラテンの文化へのリスペクトでもある今作ですが、『ジョン・レグイザモのサルでもわかる中南米の歴史』でラテン系の人々が踏み躙られ、文化が簒奪されてきた歴史に憤慨し、ラテン系の占める人口やアメリカへの貢献にも関わらずメディアにおける表象があまりにも少ないことを「文化的アパルトヘイトだ」と批判していたジョン・レグイザモがブルーノおじさん役で出演しているのも感慨深いですね。

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