Red Notebook 『ラーヤと龍の王国』誰がディズニー・プリンセスだったのか 忍者ブログ
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ディズニーとか映画とか。All I can say is this: listen to me. My name is Raito. That is not my real name.
2024年11月23日 (Sat)
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2021年03月05日 (Fri)
見てきましたよ、『ラーヤと龍の王国』!
愛知県内では唯一字幕上映をしているイオンモール名古屋茶屋へ。
ちなみに愛知県外の方にはイメージしにくいかもですが、イオンモール名古屋茶屋は名古屋駅(名鉄バスセンター)から直通バスで1時間くらいかかります。映画見て帰ってくるだけで1日仕事でした。ヘロヘロ。でも字幕上映してくれるだけありがたいです。
以下、ネタバレありの感想です。
帰りのバスの中でダカダカ打ったのでいろいろ間違えてるかも…。


国同士が対立し、人々が互いを信じられなくなった荒廃した世界で生きるヒロイン、ラーヤ。
かつてはこの世界の人々は「クマンドラ」という一つの国として生きていましたが、「龍の石」をめぐって争ううちに5つの国に分かれてしまいます。
予告編などでは伏せられていましたが、そもそもクマンドラの国に災いをもたらしたのは「ドルーン」であり、それを救ったのが「龍の石」だったということが明らかになります。「ドルーン」は紫のモヤモヤした煙?みたいなもの(いちおう意思らしきものはあるっぽい)で、これに飲まれると人は石になってしまいます。

ラーヤと旅の途中で仲間になるメンバーはみな家族を石にされてしまっており、ドルーンを倒し石にされてしまった人たちを救うことを目的に、彼らは結束します。
かつて「龍の石」で「ドルーン」を撃退した龍のシスー曰く、「ドルーン」は「人々の猜疑心や嫉妬から生まれたもの」(ごめんここうろ覚え)。つまり、「人間の悪しき心」なわけです。
いやー、人間てほんとろくでもねえな。
だから、『ラーヤと龍の王国』には「わかりやすい悪役」はいません。ナマーリは敵だけど、別に「倒すべき悪」ではない。災いと悲しみをもたらすのはただ「人々の心」であり、それを救うのも「人々の心」しかない。
シスーは「龍」と「ドルーン」を対照的なものとして説明していましたが、龍は人々の「良き面」、「ドルーン」は人々の「悪しき面」の具象化とも言えます。
だから世界には「人々の良き面」を信じさせてくれる「龍」が必要だった。

それゆえ、「ラーヤと龍の王国」における世界の救済は、ラーヤ一人の活躍ではなく、「人々」(の象徴としての、5つの国々から集まった脇役たち)の活躍によってもたらされるんですね。
メインビジュアル出たときに「サブキャラ多過ぎじゃない? 覚えらんねー」とか言っててごめんね。
シスーが死んだことで怒りに目を眩ませるラーヤよりも、真っ先に人々を(しかも、「信用できない」と言っていたファングの人々を)助けることを考えるブーンやトング、ノイたちの方が、英雄的なキャラクターだとさえ言えます。
そして、ラーヤだけでなく彼らの行動によってこそ、世界は救われるわけです。

私なんかは人間ぎらいなので、すぐに「ほんと人間ってロクでもないわ〜、人類は滅びるべきだわ〜」と言ってしまうんですが、『ラーヤと龍の王国』くんはそういう姿勢に対して「そういうの良くないと思うよ‼︎」と言ってるわけです。ごめんね『ラーヤと龍の王国』くん。

あ、あと世界の命運を背負った「選ばれし子」が頑張る話にしんどさを感じつつあったなか、『モアナと伝説の海』では世界を救う命運を背負ったモアナに「逃げたって良い」と諭すのが優しくて好きだったのですが、『ラーヤと龍の王国』はそこからさらに、世界の命運はたった一人で背負うもんじゃないぜ!という境地に達していて、そこも好きでしたね。


はい、そして間違いなく多くの人々の心を掴んだであろう、本作の悪役(というか敵役)ナマーリさんです。
予告編でビジュアルが出たときから界隈(なんらかの界隈)をざわめかせていました。
いけてる髪型(ツーブロック)、鋭い眼光、バッドアスなアクション。
しかも声はジェンマ・チャンです。さささ最高〜!!
そしてなんとナマーリ、ファングの国の長の娘なんで、「プリンセス」なんですよ。
そう、ディズニープリンセスなんです!!
日本のディズニー・スタジオ公式がラーヤと歴代ディズニーヒロインの共通点を紹介するという企画をしていましたが、ナマーリもディズニーヒロインの系譜に繋がるキャラクターです。
ラーヤも「一族の長の娘」なので立場的にはナマーリと同様ですが、作中で長や部下や民から「プリンセス」と呼ばれるのは、もっぱらナマーリの方です。(そもそもラーヤの出身国であるハートの人々がほとんど出てこないので、ラーヤを「プリンセス」と呼ぶ立場の人がいないのですが)
うろ覚えだけど、ラーヤもナマーリのことを「ショートカットのお姫様」って呼んでた、かな…? ショートカットって言ってたのは確実なんだけど。(字幕では「ショートカット」ですが、原語ではundercut=ツーブロックと言っていました)

ナマーリはラーヤからすれば敵ではありますが、彼女は自国の民を幸せにすることを考えて行動しており、『モアナと伝説の海』のモアナや『アバローのプリンセス エレナ』のエレナのような、近年のディズニーの「民衆を導くプリンセス」、「統治者としてのプリンセス」の系譜にあります。
一方のラーヤは自分の父親を救うことを目的としてはいても、ハートの国をどうやって統治するかとか、自国の民をいかにして救うかということにはあまり興味がない様子(旅の中で家族を失った人たちと出会ったことで「人々を救いたい」という気持ちにはなったようですが)
そんな正統派(?)ディズニープリンセスと呼んでも差し支えないナマーリを悪役(敵役)に設定するというこの采配。にくいね…
(映画でなくテレビシリーズなら、『ちいさなプリンセス ソフィア』に「プリンセス・アイビー」という「プリンセスかつ悪役」というキャラクターがいたりします)

そして脚本のアデル・リムがインタビュー で語っているように、ナマーリとラーヤはコインの裏表、ナマーリはラーヤの「ありえた姿」として描かれています。
ラーヤはナマーリを「悪党」と呼びますが、ナマーリにとってはラーヤこそが「悪党」という台詞が、端的にそれを表しています。
実写版『ムーラン』でも魔女はムーランの「有り得たかもしれない姿」として設定されていましたし、ディズニーくん最近そういうの好きね。
『ムーラン』の魔女同様、ナマーリも贖罪の機会を与えられており、クライマックスの展開など、ほぼナマーリが第二の主人公と言っても過言ではないのでは。実質ダブルヒロイン、『アナ雪』じゃん。シスーを加えたらトリプルヒロインです。やったね〜!!(?)
また、ラーヤもナマーリも「間違いを犯し人々を分断させてしまうが、それを正そうとするヒロイン」であり、そこは『ズートピア』のジュディの系譜を連想させます。

ナマーリさん、ふだんはfierce warriorだし、幼少期の「(龍の石は)ファングがもらう」と宣言するところなど子どもとは思えない悪役ムーブの板につきっぷりなのですが、ラーヤと同様に「ドラゴンオタク」でもあり、シスーを見て感極まっちゃうところとかめちゃくちゃ……めちゃくちゃに……可愛いんである……
最後グループハグでちょっと気まずそうにしてるところもね、最高に可愛いですね。

ラーヤとナマーリ、非常にshippability(「shipにしやすさ」を指す)が高いです。AO3にenemies to friends to loversのタグついた作品がめちゃくちゃ投稿される未来が見えるもん。
ラーヤとナマーリの友情を表す「龍のペンダント」が、物語のキーアイテムになっているところもエモくて良かったですね。ナマーリに裏切られてもあのペンダントを捨てられなかったラーヤ、「龍が好き」ということもあるでしょうが、ねえ……。
憎い相手でも思い出の品を捨てられず肌身離さず持ってるとかもう、継国巌勝と継国縁壱?
なんでこのペンダント商品化されてないんですか? ちょっと!マーチャンダイズ部門!
「ラーヤとナマーリが仲良くご飯作って食べる二次創作絵が見たいな〜」と思っていたら、エンドロールでほぼそのままの絵面だされてのけぞりました。ディズニー、shipperの需要を「わかり」過ぎている。
ハッ、もしかして序盤のナマーリの「別の世界だったら友達になれてたかも」という台詞もModern AU(現パロ)への伏線……?

あと、クマンドラから分裂したそれぞれの国は龍の身体の部位から取られた名前なわけですが、この名前がその国の性質っぽいのが面白かったですね。
ラーヤの出身国がハート(心、心臓)なのは情や温かさを連想させるし、ナマーリたちの国がファング(牙)なのも、攻撃性や裏切りを連想させる。タロン(爪)だったら指先のイメージで掏摸が多い、とかね。
国の名前からいつしか「あの国の人間はああいうふう」というイメージが生まれ、その国に住む人たちもそれを信じるようになったんじゃないかなあ……というようなことを思いました。

併映の短編「Us Again」はアニメーションと音楽とダンスが心地良過ぎてわけも分からず泣いてしまったのですが、老いに対する忌避を真正面から扱っている点もなかなか骨太じゃねーの。フッ、おもしれーアニメ…(概念上の跡部景吾)と思いました。
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