Red Notebook 『ジャングル・クルーズ』女の子よ、冒険的であれ(ただし顔を汚さないこと) 忍者ブログ
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ディズニーとか映画とか。All I can say is this: listen to me. My name is Raito. That is not my real name.
2024年04月27日 (Sat)
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2021年07月30日 (Fri)
『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズの二匹目のドジョ……ディズニーのアトラクション映画化最新作、『ジャングル・クルーズ』を見てきました!(劇場鑑賞。ディズニーは早く某大手シネコンと仲直りして。)
以下、ネタバレありの感想です。


「カリブの海賊」と同じように「ジャングル・クルーズ」も古参アトラクションだけあって、映画化するとなるとファンの期待に答えつつ古い描写は避けるなど、細心の注意が必要となります。
特に現代で無邪気に「首狩り族」は描けんやろ!とか、アトラクションは世界のいろんなジャングルがシームレスに繋がってるからアマゾンだけが舞台じゃないじゃん、というのが気になっていましたが、この点は「ロック様演じるフランクが全てでっち上げた」という力技で処理していました。ロック様のチャームでだいぶカバーされている気もしますが……。
それでいてハラハラドキドキの荒波や古代文明の魔術など、心踊る冒険要素は真正面から描いていていて、正統派冒険映画に仕上がっています。
アトラクションに乗っているときの感情の動き(船長のダジャレに苦笑いし、茶番に付き合いつつ笑い、しかし最後には魔法を目撃して高揚した気分で幕を閉じる)を同じように味わえる構成になっているのが特に上手いなあと思いました。
(でも序盤のロンドンでのドタバタは尺が長すぎ&アマゾンのマーケットでの追いかけっこと被るのでもうちょっと短くできたやろ)

今作の主人公はエミリー・ブラント演じる植物学者・リリー。
万病に効くと言われる「月の涙」という伝説の花を求め、アマゾンへの冒険に繰り出します。
リリーは冒険心が強く活動的な女性で、既存の価値観に囚われず女性ながらズボンを履いたり、錠破りが得意だったり冒険に繰り出したりと、ディズニーが喧伝したい「進歩的な女性像」を体現しています。

しかし、リリーの体現する「進歩的な女性像」、詰めが甘いというか緩いというか……。
なんでかというとリリー、無傷なんですよね……。
一緒に冒険しているマクレガーやフランクは、ピラニアに噛まれて傷だらけになったり骨折したり真っ赤に日焼けをしたりしているので、余計にリリーの無傷さが目立ちます。ロンドンからアマゾンに来たというのに顔や腕に日焼けもしていなければ、終盤になっても顔に傷ひとつない。
冒険心に溢れた女性を讃える一方で、でも見た目は見苦しくない程度をキープしてねって、欺瞞では……? エミリー・ブラント演じる足の裏に釘が刺さっても歯を食いしばって悲鳴を耐える女(『クワイエット・プレイス』)が脳裏にチラつき、リリーだけ冒険の危険度のリアリティラインが違いすぎるだろ……という思いが拭えませんでした。

リリーのキャラクターでもう一つ問題だと思うのは、彼女が植物学者だという設定でありながら彼女の知識が一切生かされないところ。
発明家を夢見る『ダンボ』のミリー、「科学と技術を使うのよ」というセリフと共に登場し気球を作ってみせる『くるみ割り人形と秘密の王国』のクララ、アニメ版では父親の職業だった発明を受け継ぎ洗濯機みたいなものを作ったりしている『美女と野獣』のベル、でも彼女たちのその才能が、本筋に影響を与えることはありません。
同様にリリーも植物学者ではありますが、彼女が植物学の知識を冒険に生かすシーンはありません。
女子の領分ではないと思われがちな「科学」を積極的に女性キャラクターに結びつけてエンパワメントしようという意図は分かるものの、それが物語に寄与しないというパターンがこうも続くと、あまりに表面的すぎて白けてしまいます。

現地人から盗まれたものを本来自分が持っているべきではないという意識があるのはまあ良しとして、不可抗力とはいえ現地のマーケットをめちゃくちゃにしたり、英国人に売るために捕らえられた動物を逃がして現地の商売をむちゃくちゃにしたりするのは複雑な気持ちになったりも……。モニョ……。(動物の売買を良しとするわけではありません)

この時代の「女」の枠組みに収まらないリリーに対し、弟のマクレガーは期待される「男」の役割にはまれない(ゲイである)ということが明かされます。
ファッション好きで、「スキンケアに凝っちゃう男、おかしいねー」みたいな扱いだったりとステレオタイプな描写なので序盤はかなり警戒しましたが、彼がゲイであるということを真剣に捉えたシーンもあり、キャラクターとしてもそこそこ活躍していたので最終的にはまあ……許すか……という地点に着地しました。(謎のウエメセ)
でも『美女と野獣』のル・フゥの描き方といい、これで何か進歩的なことをした気になってんじゃないだろうな、という気持ち。まだまだだよ。
しかし、エリート男性で構成される権威から爪弾きにされた女学者とゲイの弟が一発逆転、という構図はなかなかロマンチックではあります。

ロマンチックといえば、フランクとリリーのロマンスの描き方は丁寧で良かったですね。
ロック様がボートの上でギターを弾くというシチュエーションはそれだけでうっとりしますし、カメラでお互いを撮るくだりも、華麗なCGに満ちた本編の中にあって抑制された美しさを湛えるシーンになっていて印象的です。(さらっとリリーが「撮る側」に回っているのもいい)

悪役の一人は、ジェシー・プレモンス演じるドイツの王子。アマゾンにドイツの潜水艦が登場して王子が魚雷をぶっぱなしてくる絵面、端的にバカなのですが(褒めてます)、ジェシー・プレモンスは「嫌な男」を演じさせると本当に最高。
書いてて気づいたけど、これ『アナ雪』や『マレフィセント』に続いて「王子」「王族」が悪役の映画ですね。

そして、もう一人の悪役がエドガー・ラミレス演じる呪われたコンキスタドールです。『パイレーツ・オブ・カリビアン』でいうバルボッサ、『ジュマンジ: ウェルカム・トゥ・ジャングル』でいうところのボビー・カナヴェイルの役どころ。
これがなんかもう……めちゃくちゃ えっち なんですよ……。バルボッサもボビー・カナヴァイルもたいへんセクシーなので、こういう悪役はセクシーと相場が決まっています。
エドガーラミレスの顔の裂け目から蛇が出てくるのはえっちすぎて何? 男根のメタファー ?
あと、突然ロック様とエドガー・ラミレスの義兄弟憎み愛BLが始まってびっくりしました。
エドガー・ラミレスがロック様を剣で貫いたりしていて、なんだかホモエロティックな雰囲気がある。なに?これも男根のメタファー ? どうしたどうした。

割と文句が多くなってしまったので他に良かったポイントも言っておくと、
◯エンドロールの各キャラクターを描いた絵が良い
◯冒険映画らしく音楽がワクワクする
急にメタルチックな音楽が流れて何!?と思ったらメタリカのオーケストラ・カバーだったりもするのですが(謎)、全体的には冒険映画として楽しく心踊るサウンドトラックになっています。
最後にリリーとフランクがロンドンの街を車で爆走するシーンですら、やたらとワクワクする曲がかかってていて、ここから冒険が始まる…!!という気分になります。(終わりのシーンです)

ところでディズニーさん!次にアトラクションの映画化するならストームライダーをお願いします!ストームライダーをお願いします!ストームライダーをお願いします!ストームライダーはクローズしていません。
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