Red Notebook 『2分の1の魔法』かつてジェット気流だったみんなへ 忍者ブログ
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ディズニーとか映画とか。All I can say is this: listen to me. My name is Raito. That is not my real name.
2024年04月29日 (Mon)
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2020年08月22日 (Sat)
 ようやく公開になりましたね!『2分の1の魔法』。
 新型コロナウイルス感染症の影響で遅れての公開になったことでちょっとモチベーションがそがれていたのと、予告編だとそんな惹かれないし、とはいえ監督(ダン・スキャンロン)の前作は大好きだし見とくかあ…くらいのテンションで見に行ったのですが、びっくりするくらい泣いてしまいした。
 ただ、この泣いたポイントがあまりに己の人生のパーソナルな部分ゆえすぎて、客観的に映画としての出来がどうかと言われたらよくわかりません。

 以下、ネタバレありの感想です。




 舞台は魔法をなくした世界。
 主人公はちょっと気が弱くて自分に自信のないエルフの男の子、イアン。魔法オタクの兄バーリーとお母さん、ペットのドラゴンと一緒に住んでいます。お父さんは若くして亡くなったようで、イアンはお父さんの記憶がありません。
 あらすじは予告編のとおりで、魔法でお父さんを復活させようとしたがうまくいかず半分になってしまい、イアンとバーリーは魔法を完成させるための冒険にでる、というもの。

 このね、このバーリーがね、めちゃくちゃ刺さったわけです。
 バーリーは周囲からけっこう迷惑がられており、ひとりで古代遺跡を守るための運動をして警察に厄介になるし、弟のことをめっちゃ恥ずかしい車で迎えにきたり、弟の友達の前でオタクまるだしで喋って弟に恥をかかせたりするわけです。パンツも見えてるし……。
 お父さんを復活させるための冒険の中でも、お父さんに会いたくて必死なイアンには、バーリーはちょくちょく自分のオタク趣味を優先させているようにしか見えなくて、観客はイアンとともにウンザリさせられます(というピクサーの作劇テク)。
 いやほんとバーリー、うざいんですけど、明らかに「ウザいキャラ」として設定されているんですよね。。声を当てているのはクリス・プラット。これは『ジュラシック・ワールド』とか『マグニフィセント・セブン』のタフでカッコいいクリス・プラットではなくて、『憧れのウェディング・ベル』とか『ウォンテッド』の、あの「主人公のウザい友人ポジのクリプラ」です。(『ウォンテッド』見たことないけど……。)
 イアンは高校生ですが、バーリーは何をしているのかよく分かりません。劇中のセリフからティーンエイジャーのようですが、おそらく高校は卒業しているのでしょう。お母さんからは「いい加減大学に行ったらいいのに」というような愚痴を言われています。高校を卒業してからたまにバイトしたりしてプラプラしてるみたいなかんじかな…

 バーリーはこんな感じなので、劇中、なんと弟であるイアンがバーリーのことを「ダメなやつ」だと思っていることが判明してしまいます。
 な、なんだってー! イアンおまえ!! いやでも、たしかにバーリーあんな感じだしな……まあ気持ちはわかるよ……となる観客。(ピクサーの作劇テク)

 ここで私のバーリーに対する「辛い」が振り切れてしまいました。
 こんなブログをやっているくらいなので、私は当然オタクなんですけれども(?)、自分の趣味に没頭するあまり、利己的とか自己中とか思われて周囲に迷惑がられているこのかんじ、わ、私じゃん……。
 そして私は三人きょうだいの一番上なのですが、私が一番しっかりしていないんですよ。なんなら下のきょうだいから面倒を見てもらっている。そういう、私がちゃんとしてないこととか、将来結婚するつもりがないこととかに呆れられていて、下のきょうだいから「もうこいつ…ダメだな……」という「諦め」を感じることがビンビンにあるわけです。

 それゆえ、バーリーを見ていると

オタクで自己中→「いやこれ私じゃん…」
すぐ物を散らかす→「いやこれ私じゃん…」
親から将来を心配されている→「いやこれ私じゃん…」
下のきょうだいからダメなやつと思われている→「いやこれ……私じゃん……」

の「いやこれ私じゃん」乱れ打ちを食らって心が瀕死になってしまいました。

 バーリーを見ているときに感じる辛さには、『シング・ストリート』のプラプラしている主人公のお兄ちゃん(演:ジャック・レイナー)を見たときにもちょっと近いものがあります。
 「人生を立て直すためにハッパやめてるんだ」と告げたお兄ちゃんを、弟(主人公)が「(今さら人生を立て直すなんて)何のために?笑」って小馬鹿にするシーンがあるんですけど(いやほんと弟ひどいな) 、それに対して兄が「みんなお前を褒めて俺を落ちこぼれ扱いするが、かつては俺がジェット気流だったんだ!」と反論するんですよね。あのシーンに感じる辛さに似ている。
 そのせいか『2分の1の魔法』を見ている間、ずっとジャック・レイナーの顔がチラついてしまいました。ジャック・レイナーとクリス・プラット、雰囲気似てるし……。

 というわけで「下のきょうだいからダメなやつと思われている長子を見るの辛すぎる……」と思いながら見ていたんですが、イアンが「自分が父親に求めていたものを、実はずっとバーリーが与えてくれていた」ことに気づくという展開でもう……号泣でしたね……。
 「ダメな長子」をこんな形で肯定してくれんの〜〜!? や、優しすぎる〜〜!!
 妹の運転の練習に付き合ったあの日〜!!みたいな気持ちになってボロッボロ泣いてしまいました。
 いや、肯定されているのは「下のきょうだいからダメなやつと思われている長子」じゃなくてバーリーなんだけどね、バーリーはダメなとこいっぱいあるけど弟思いのお兄ちゃんだからこそ肯定されるわけでね、それは分かってるんだけどね。
 しかも、「イアンが自分にとってバーリーがいかに大切が気づく」ことによってバーリーを肯定するだけじゃなくて、物語の当初の目的である「一日だけ復活したお父さんと話をする」というご褒美を手にするのが、イアンではなくバーリーというのにも泣いちゃう。
 『魔法使いハウルと火の悪魔』でソフィーも言ってましたけど、物語ってやっぱり長子は失敗して、下の子がハッピーエンドを手にすることが多いじゃないですか。三人のきょうだいが出てくる昔話があったら、成功するのは一番下のきょうだい。
 それこそ『シング・ストリート』のお兄ちゃんだって、弟を送り出す側なわけで。
 でもさ、お父さんに会えたのは、お父さんに言いたかった言葉を言わせてもらえたのは、お父さんに聞きたかったことを聞かせてもらえたのは、バーリーだったんですよ……うう……。

 下のきょうだいからダメな奴だと思われている長子のみんな、強く生きていこうね。


 その他の感想箇条書き
◯中年以上の女性キャラクターの描き方が良かった。マンティコアとかお母さんとか質屋のおばちゃんとか。特にイアンとバーリーのお母さんは聖母でも口うるさい母親でもなく、かつ面白みのあるキャラクターとして描かれていた気がします。キャラデザもかわいい。
◯世界観は「ファンタジーのキャラクターが現代社会に住んでいる。が、現代社会の裏にはまだファンタジーが…」という感じなのですが、この"ファンタジー"の部分が(あえてだと思いますが)「みんなが最大公約数的に持っているファンタジーのイメージ」なので、正直あんまり見てて面白くなかったな……
でも高校の校舎がドラゴンになったり、パンクしたグウィネヴィアがまるで本当のユニコーンのように見えたり、そういう「現実のものにファンタジーが宿る」シーンはグッときました。
◯ピクサー初のLGBTキャラ!とか言われてた警官(ほんとにチョイ役)、「私もガールフレンドの子と〜」みたいなセリフがあるだけで、いや〜まあ〜だろうな〜とは思ってたけど本当にこんだけかい。
も〜ディズニーはいいかげん「SWに同性同士のキスシーンが!チラッ(ほぼ背景)」「実写版のルフゥはゲイという設定です! チラッ(一瞬だし本編だけ見てたらよくわからん」みたいなのやめてください。やるなら真面目にやって。
テレビシリーズなら「アウルハウス」とか出てきてるので、長編映画でも頑張ってほしいですね。
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