Red Notebook 『カーズ/クロスロード』父と息子のアメリカ、父と娘のアメリカ 忍者ブログ
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ディズニーとか映画とか。All I can say is this: listen to me. My name is Raito. That is not my real name.
2017年07月16日 (Sun)

「カーズ/クロスロード」見てきました。「カーズ」についてはキャラクターに対する思い入れが強すぎてぜんぜん冷静な思考ができないので以下とっちらかりまくりの感想です。(ネタバレあり)

◯親愛なるドック・ハドソンへ

「カーズ」で主人公マックイーンの師となるドック・ハドソンを演じたポール・ニューマンの死を受け、「カーズ2」でドックが死んだと仄めかされていたことがどうしても受け入れられず「カーズ3」を見る直前まで「ドックは死んでないもん……ドックはカーズ2のときハワイに行ってただけだもん……ドックは死んでないもん……」とうわ言のようにつぶやいていたのですが、これは私のようにドック・ハドソンの死を受け入れられない者たちの心を救うための、そしてドック・ハドソンを安らかに眠らせるための映画だったのだと思います。
いやだって辛いもん。「カーズ2」のあの扱いでドックの死が片付けられちゃうの辛すぎるもん。ポール・ニューマン以外にドックがいないのなら、せめてちゃんとドックを見送ってほしかったもん。それが「カーズ3」なんですよね。
あの世界で、ドック亡き後マックイーンはどんな気持ちでレースを続けてるのか。マックイーンの人生にとってドックの存在はどんな意味があったのか。ドックの人生にとってマックイーンの存在はどんな意味があったのか、ドックの人生は幸せだったのか、全部全部語り切って「ハドソン・ホーネット」というキャラクターを見送ってくれた、それがこの映画の意義なんだと思います。

見終わった後、友人と「ドックはいい男ですなあ」「いい男ですなあ」としみじみ言い合いながら帰ったのですが、製作陣がこの映画に込めた思いのたぶん7割くらいが「ドック・ハドソンはいい男」なんですよね。
とにかく全てのシーンにおいてドックがカッコいい。「カーズ3」でドックが初めて喋るシーン、「あれ?夢フィルターかかってる?」って思うから。それくらいドックがキラッキラしてるから。
スタッフがあまりにポール・ニューマンを、そしてドック・ハドソンを愛しているために、マックイーンもまたドックをあまりに愛していて、そしてドックもまたあまりにマックイーンを愛していて、2人が共に走った日々はどうしようもなく過去のものであってもラジエータースプリングスの光景の中に、マックイーンの中に生き続けていて、その「取り戻せない過去の輝き」があまりに美しくて泣いてしまった。
「カーズ」の中のルート66に代表される「美しい過去への郷愁」が、「カーズ/クロスロード」では「ドック・ハドソン」という1人のキャラクターに仮託され変奏されるんですよ……。
「腐女子の私でもさすがにそこまでは想定してなかったわ」という濃ゆい師弟愛を見せつけられましたわ……。

◯父と娘のアメリカ

ドックとマックイーンの関係と対になるものとして描かれるのが、今回の新キャラでありマックイーンのトレーナーのクルーズ・ラミレスとマックイーンの関係。
クルーズ・ラミレスは名前からして明らかにラテン系で、演じるクリステラ・アロンゾもラテン系。
クリステラ・アロンゾの本業はスタンダップコメディアンで、有色人種の置かれている状況やステレオタイプについてのネタをガンガン飛ばす人です。Netflixでも見られるよ。

https://www.netflix.com/title/80117453?s=i&trkid=13752289
↑「トランプが国境に壁を作るんなら泳いで渡ってやるから!」などパワーワード満載

「カーズ」の1作目では(おそらく)白人男性(ドック・ハドソン)から白人男性(マックイーン)へと渡されたバトンが、今度は白人男性(マックイーン)から非白人女性(クルーズ)に渡されていく展開となっています。
白人の主人公が体現するものが非白人に継承されていく、という点では「グラン・トリノ」の系譜にあると言ってもいいかも。そういえば「グラン・トリノ」でも「継承されていくもの」は「車」なのだ。
白人から非白人へ、男性から女性へバトンが渡される、というのはここ最近のアメリカ映画のトレンドですね。
「スター・ウォーズ」シリーズなどもそうですが、「父と息子のアメリカ」から「父と娘のアメリカ」へ、という物語は最近多いですね。ディズニーなら「トゥモロー・ワールド」とかも。(最近か?)

ただ、この「マックイーン」から「クルーズ」へ、の継承の描き方については私はかなり不満があります。
「カーズ」第1作のマックイーンは若僧だったので、生意気で思い上がっていてもまだ可愛げがありました。
けれど今回のマックイーンはすでにベテランであり、年齢的にも中年に差し掛かっているわけです。伝説のベテランレーサーと若いトレーナーという(立場的な)力の差がある関係で、マックイーンはトレーナーの助言にまったく耳を貸さず、プロとしての彼女を尊重せず、挙句に八つ当たりするおっさんなんだなって思うと、ちょっとその、キツい。
そのくせ年長者で男であるスモーキーの助言には素直に従うんだよね…。
クルーズに八つ当たりしたことに対する謝り方も茶化しながらなのが本当にキツい。あそこで真摯に謝ってくれていたらまだマシだったのに。
「カーズ」1作目でマックイーンは「レースに勝つことだけが全てじゃない」「自分よりも他人のために何かすること」を学んで、ラジエータースプリングスの皆を救ったじゃないですか。マックイーンは何度同じ教訓を学ばないといけないのかな。「ファインディング・ドリー」のマーリンにも同じことを思ったのだけれど。

◯全ての仕事にエールを

確かにクルーズはレーサーになりたかったのに、挑戦する前に諦めてしまったのかもしれない。でも彼女は間違いなくトレーナーの仕事にやりがいを感じてたし、上司であるスターリング氏に認められるくらい、ちゃんとトレーナーとしての結果を出してたわけですよ。そのことをマックイーンはまったく認めないばかりか、物語はクルーズから「指導する」という立場を奪い、「年長者から指導される」立場に追いやってしまう。
なんかこう、あまりにトレーナーという仕事や若者に対する敬意が無さすぎないかい…?
これが本当に「自分のなりたいものに対する才能が無くても、別の道もあるかも」という大人で誠実なお仕事映画としての結論を描いてくれた「モンスターズ・ユニバーシティ」と同じスタジオの作品なの…?「モンスターズ・ユニバーシティ」は花型でない仕事のこともちゃんと尊重してくれてたよ。仕事に対する敬意があったよ。

このクルーズのプロフェッションに対する軽視というのは、もともと「カーズ」が持っていた危うさを悪い方向で露呈していて、本当に辛かったです。
「カーズ」第1作は「古き良き」アメリカへの郷愁で溢れていて、若者が「古き良き」ものから学び取ることがテーマの一つになっています。
「カーズ/クロスロード」が辛いのは、「古き良き」ものから学ぶ、という展開が「新しいもの、若いものの軽視」とのセットという形で現れるからなんです。
それゆえ、最新機器を取り入れたクルーズのやり方は悉く否定される。若い女のプロフェッションが何度も何度も馬鹿にされ、あげく彼女のやり方を全部奪われてそっくり「伝説的な年長者たちの」やり方を叩き込まれる様、っていうのはやっぱり見てて気持ちよくはないですよ。
オリジナルの「カーズ」でもマックイーンはドックに教わる側だったけれど、それでも彼自身が持っていたものを奪われたわけではなくて、もともと持っていた技術にプラスして「古き良き」ものを得た訳で。
せめてクルーズがトレーナーではなく新人レーサーで、独自のトレーニングをしようとするマックイーンに憧れて勝手に着いて来てしまった…という展開ならこんなにモヤモヤしなかったのに。

◯悪役のための悪役

「カーズ」のチックも、「カーズ2」のペッパーたちも、「カーズ」シリーズは悪役の描き方が平面的で、それは「カーズ/クロスロード」でも同様だったのでやっぱりちょっとなあと思う部分はありました。様式美っちゃ様式美、なのか?
今回悪役的な立ち位置にいるのは新人レーサーのジャクソン・ストームとスポンサー企業の社長であるスターリング氏なのですが、特にスターリング氏の扱いについては不満があります。いやあの人、別にそんな悪人にされる筋合いないよね?慈善事業でスポンサーやってるわけじゃないんだから、ビジネスとして商品を売り込むことも、マックイーンのレーサーとしての価値を割り切ることも、訓練されたわけでないクルーズが走ることに難色を示すことも、彼の立場としては当然のことじゃないですか。それでもレーサーの情熱にまったく無頓着というわけでもなく、莫大な金をつぎ込んだシュミレーターを壊したマックイーンの無茶な交渉にさえ(おそらくファン心に抗いきれず)応えてあげてたじゃないですか。
(ところでこのスターリング氏が展開しようとする「過剰なマーチャンダイジング」、今まで「カーズ」シリーズが散々批判されてきたことなので、「自虐ギャグかな?」と思ってしまいました。)
ジャクソン・ストームについても、彼と同じようにルーキーのころのマックイーンだって思い上がった嫌な奴だったのだし、彼もこの後変わっていくかも……という描写が少しでもあればもう少し印象が変わったのにな、と思います。

◯日米キャスト陣による印象の違い

吹き替え→字幕の順で見たのですが、字幕で見たときのほうがマックイーンのクルーズに対する態度へのいら立ちはやや少なかった気がします。(単に慣れただけかもしれませんが)今回の中年としてはちょっとどうかと思うマックイーンの態度は、オーウェン・ウィルソンのあのフワフワした声によって醸し出される"大人になりきれない大人"、"ダメだけど憎めないやつ"というオーウェン・ウィルソン力(おーうぇん・うぃるそんぢから)によってのみギリ成立しているのかもしれない……それにしてもやっぱりちょっとどうかと思うし、クルーズに謝るときは真摯な態度でいてほしかったけど。

クルーズ・ラミレスはクリステラ・アロンゾの方が鼻っ柱が強そうな印象。対して吹替の松岡茉優は声の高さもあって、だいぶ柔らかく可愛らしいかんじ。印象が柔らかいぶん、若い女がプロフェッションを軽視されることに対する拒否感は吹替の方が感じるかもしれない。

ドックについては今作においてはポール・ニューマンであるということに意義があるので字幕と吹替の比較はできないです………………

アーミー・ハマーのジャクソン・ストームは声が低いこともあって、かなりクール。藤森慎吾(オリエンタルラジオ)のストームは声が高いのと、中の人のイメージもあってチャラい。圧倒的チャラさ。重低音の冷酷さと高音の軽薄さ、どちらも「嫌な若者」像なんだけれども、だいぶ印象が違いますね。
これ、若者に対する悪いイメージのステレオタイプが日米で「冷酷、傲慢」と「チャラい」の差があるのでは…?と思ったけど、そこまでは考え過ぎかな。キャラクターの印象はかなり違いますが、この若者像の違いは面白いですね。

スターリング氏はネイサン・フィリオンの方が嫌味ったらしい金持ち感があって悪役感は強い気がする。大川透氏の吹替は爽やかで理知的でいかにも仕事ができそうなので、ラストシーンで余計に「いやこの人ビジネスマンだし間違ったこと言ってないやんけーー」感が強く出てしまったかな。

スモーキーについてはクリス・クーパー結婚してくれ!!!!!!!クリス・クーパー結婚してくれ!!!!!!クリス・クーパー結婚してくれ!!!!

◯短編Lou
"Lou"は感動要素+アニメーションとしての楽しさのバランスが良かったですね。
分解され飛び跳ねまた結合し自由自在に形を変える、アニメーションならではの万能性の気持ち良さ。ストーリー展開もスマート。
ただ、メインキャラの男の子(J.J.)とモブキャラのデザイン(頭と身体のバランスなど)が違いすぎて、J.J.だけが異様に世界から浮いてるように感じるんですが、あれはわざとなんでしょうか。

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