Red Notebook 「アバローのプリンセス エレナ」女性、仕事、リーダーへの意欲 忍者ブログ
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ディズニーとか映画とか。All I can say is this: listen to me. My name is Raito. That is not my real name.
2024年11月23日 (Sat)
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2017年11月10日 (Fri)

  近頃、個人的な課題研究のテーマである「ディズニー・プリンセス」についてあまり書いていなかったので、ツイッターでも呟いていた「アバローのプリンセス エレナ」についてまとめておきます。(おたくあるある、誰にも頼まれてないのに勝手にテーマを決めて課題研究をし始める)
 ご存知ない方のために説明すると、「アバローのプリンセス エレナ」はディズニーチャンネルで放送中のテレビシリーズです。アバロー王国の次期女王であり国を治めるプリンセス、エレナが仲間とともに様々な冒険や問題を乗り越えていくというもの。同じくディズニーチャンネルのテレビシリーズ、「ちいさなプリンセス ソフィア」のスピンオフ作品です。
 エレナは初のラテン・アメリカ系のディズニープリンセスということでも話題になりました。物語の舞台となる「アバロー王国」は中南米の国々をモデルにした架空の国で、劇中でも「死者の日」をお祝いしたり(第9話「先祖のお祝い」)、マヤのピラミッドらしき建物が登場したりと、中南米の文化が取り入れられています。他にもいろいろ元ネタがあるらしいのですが、私の知識ではあまり分からず。
 クリエイターのクレイグ・ガーバー氏がたまにツイッターで元ネタを呟いてくれています。


◯働く女性としてのプリンセス、最高権力者としてのプリンセス
 実はスピンアウト元の「ちいさなプリンセス ソフィア」は断片的にしか見ておらずあまり熱心には追いかけていなかったのですが、「エレナ」が気になり始めたきっかけは去年ツイッターに流れてきた公式のプロモーションでした。
 「モアナと伝説の海」の感想でも少し触れたのですが、この"This princess is learning to lead."という宣伝文句から、これは今までの「肩書きとしてのプリンセス」ではなく、「民衆を導く者としてのプリンセス」なのでは……と期待していました。
そして満を辞してAmazonプライム配信+レンタルDVDで本編を見始めました。(そうですディズニーチャンネル未契約世帯…最近知ったのですがD-lifeでも放送中です!)
 今のところAmazonプライム配信分の19話(サルの精霊)まで見たのですが、エレナはほんとうにプリンセスかつ、国の最高権力者なんですよね。オープニングでも"A princess bravely rules the land"(勇敢に国を治めるプリンセス)とか"Let her royal reign begin"(エレナの治世が始まる)とか歌われていて、「権力を持ち国を支配する存在」として描かれています。
 第1話「はじまりの日」で印象的なのが、「あなたを守るのが僕の仕事だ!(It's my job to protect you!)」と言う護衛官のゲイブに、エレナが「みんなを守るのが私の仕事なの!(It's my job to protect everyone!)」と返すところ。
 ここでいう「みんな」とは、その場にいた仲間たちのことですが、ひいてはアバローの国民のことでしょう。
 ここが結構感激モノなんですけれど、エレナにとって「プリンセス」とは、肩書きや立場である以前に彼女の「仕事」なんですね。「プリンセス」が「仕事」として定義されてる…!つまり「アバローのプリンセス エレナ」は「プリンセスもの」であると同時に「働く女性もの」でもあるわけです。
 第2話「大切な約束」で、エレナが「家族との約束を優先するか、職務の外交を優先するか」で悩むエピソードなど、子ども向けアニメでありながらまさに「働く女性もの」らしい展開です。
 そして、国の最高権力者かつ実際に統治しているディズニープリンセスって、初ではないでしょうか。(「アナと雪の女王」のエルサはクイーンですし、「モアナと伝説の海」のモアナも民衆を導く役を担っても最高権力者はあくまで父親です)
 前国王(エレナの父親)は亡くなっているのでエレナは成人すれば次期女王になることが決まっていて、祖父母は健在ながら母方なのであくまでアドバイザー的立ち位置、国民もエレナを国の最高権力者と認識しています。外交でメインになるのもエレナで(第2話「大切な約束」)、他国の王との会議にももちろん彼女が出席しています。(第8話「国王の集まり」)
 特に、国を乗っ取っていた悪の女王シュリキを倒すエピソードでは(「アバローのプリンセス エレナ/エレナとアバローの秘密」)、民衆はエレナに勇気付けられ団結して悪の女王に立ち向かうなど"民衆を導く者としてのプリンセス"の色が強く描かれています。
 今までディズニー"プリンセス"が「国民のロールモデル」にはなっても、権力からは距離を置いた存在だったことを考えると、「権力を持った若きプリンセスを魅力的なロールモデルとして描く」という、けっこう画期的なことしている気がします。
 以前に「ちいさなプリンセス ソフィア」に登場する「プリンセス・アイビー」(42話&43話「プリンセス・アイビーののろい」)について、「プリンセスかつ悪役」という興味深いキャラクターと呟いたのですが、
 一方で、彼女が悪役である理由は、王位を継いだ姉に嫉妬し王座を奪おうとした=「国を支配する権力を求めていた」から、というものです。
 ディズニーアニメにおいて権力を持つ女性=(妃ではない)"女王"たち(「白雪姫」の女王、「ふしぎの国のアリス」のハートの女王、「魔法にかけられて」のナリッサ女王)や、女王たらんとする女性(「リトル・マーメイド」のアースラ)が、「アナと雪の女王」のエルサの登場以前は悪役であったことを考えると、プリンセス・アイビーは実は旧来のディズニーヴィランズと根っこは近いといえます。
 権力を求めるキャラクターが悪役になるのは女性キャラクターに限らないのですが、男性キャラクターの場合、物語の初めにすでに王位に就いている場合には悪役になるパターンはない気がします。もしあったら教えてください。(唯一の例外は「シュガー・ラッシュ」のキャンディ大王くらい?だと思いますが、あれも「正当な権力者でない」というエクスキューズがつきます)
 さて、「エレナ」はエルサに引き続き権力を持つ女性を"善いキャラクター"として描いている点で新鮮です。しかもエルサは初期構想では悪役で、本編でも途中悪堕ちしかけるのに対し、エレナは徹頭徹尾良い子なキャラクターです。
 私が「アバローのプリンセス エレナ」で最も良いなあと思うのはここなんですよね……。
「子どもたちに向けて」「仕事で高い地位にある女性の」「ポジティブなロールモデルを描く」というところ。
 全米でベストセラーとなったシェリル・サンドバーグの『LEAN IN/リーン・イン 女性、仕事、リーダーへの意欲』では、こんなことが述べられています。
「私たちに刷り込まれているイメージでは、男性とリーダーの資質、女性と母親の資質がしっかりと結びついており、それが女性を束縛している。私たちは、子供は女性が育てるものだと考えるだけでなく、女性は他の何よりもまず子育てをすべきだと考えている。そこで女性がよい母親のイメージに反する兆候を示すと、悪印象を受け、不快になる」(サンドバーグ 62)
みんなが女性のリーダーをもっと気持ちよく受け入れなければならないーー当のリーダー自身も。(サンドバーグ 73)
 また、この本では「ハイディとハワード実験」が紹介されています。被験者を2つのグループに分け、ある人物のまったく同じサクセスストーリーを読ませます。ただし、一方のグループには人物名をハイディ(女性名)とし、もう一方のグループではハワード(男性名)とします。その結果、被験者はハイディとハワードは同程度能力があると評価するものの、ハワードには好感を持つ一方、ハイディには「一緒に働きたくない」などの悪印象を持ったというもの。この結果から、男性の場合は能力と好感度が比例するが、女性の場合は反比例し、それゆえに女性がリーダーの座に就きにくいということが語られています。
 この本についてもエリート主義すぎるとかいろいろ批判はあるみたいなのですが、ここでは割愛。
 このように、とにかく女性リーダーにマイナスのイメージが持たれやすい中で、ディズニーのような企業が女性リーダーを好ましい存在として描いてみせるって大事なことだと思うんですよね。
ちなみに、シェリル・サンドバーグはFacebookのCOO(最高執行責任者)として有名ですが、ウォルト・ディズニー・カンパニーの取締役員でもあります。
著書の原型となった彼女のTEDトーク↑日本語字幕付きです。
 ただ、「エレナ」は「肩書きでなく指導者としてのプリンセス」という面白い試みをしてるのですが、そのぶん血統主義的な規範が強いのが気になります。
 例えば、悪の女王シュリキの治世にあってエレナが民衆に指示されるのは彼女が"正統な"王位継承者であるという理由からですし、「王家のきょうだいの中で最も年長の者が王位を継ぐ」という取り決めに従い、エレナは次期女王の座に収まります。また、国の政策を審議する評議会は、庶民のナオミ1人以外は、他は全員王族で構成されています。
 また、初期大ボスの悪の女王シュリキ=悪い魔女は「若さに執着しており」、「魔法が解け自分が歳をとったことに絶望し転落する」という展開で「あ、そのへんはそのままなんだ〜」というガッカリ感は拭えません。
 それと、プロモーションで言われているようにお話が「為政者のなんたるかを学ぶ」ものになっているかというとちょっと微妙かも…。初期は「問題があるときはまずは双方の意見を聞きましょう」とかそれらしい教訓があったものの(第1話「はじまりの日」、第3話「怒りの火山」)、だんだんお友達人事が多すぎるのが気になったり(友人の家族のために役職を新設(第16話「ターナー船長のふるさと」)、友達のために国費で豪勢な誕生日パーティー(第18話「ナオミの誕生日」)…)、祖父母から一応のたしなめはあるものの、評議会の決議を無視してエレナが独断で動いたり(何話か忘れた)、外交より家族の約束を優先して良かったねオチ(第2話「大切な約束」)とか、いいのかな……
◯恋愛の不在
 もう一点「エレナ」で面白いなと思ったのは、恋愛要素がほぼないこと。主人公が恋愛をしないというだけでなく、脇キャラが誰かに恋してるとかいうレベルすら、ほぼありません。ディズニーのプリンセスものでこれはおそらく、意図的なものだと思います。
 唯一、恋愛っぽい?のは隣国の遊び人王子がエレナをデートに誘いまくる回(第7話「ステキな王子」)くらいですが、あれも王子はエレナが好きというよりただ遊び回りたいだけに見えるので、恋愛とまでは呼べなさそう。
 「エレナ」は「ソフィア」に比べて主人公の年齢がぐっと上がって、メインキャラクターに16〜18歳の男女が多く(エレナ、マテオ、ゲイブ、ナオミ)、想定している視聴者層もおそらく「ソフィア」より上の年代なので恋愛要素が入ってきても不自然ではないのですが、エレナとマテオ、エレナとゲイブの関係もあくまでフラットな男女間の友情として描かれていて、なかなか新鮮です。
 唯一、ゲイブはキャラクター紹介で「実はエレナのことが好き」と書かれているのですが、ぶっちゃけ本編見ててもあまりそうとは思えませんし、本編だけ見てたら分からない裏設定レベルかなと。もちろん、この先どんな展開になるかは分かりませんが。
 一応、ゲイブはエレナに頼りにされて喜んだり、率先してエレナを手伝おうとする描写はあるものの、彼はエレナの護衛官でなので、これも「職務を全うしたい」という護衛官としての責任感なのか、友情なのか、はたまた恋愛なのかは見る人が自由に解釈できる曖昧なレベルにあえてとどめている印象です。
 この辺り、「プリンセスもの=恋愛」のイメージから慎重に距離を置きつつ、視聴者にカップリング妄想の余地も与える親切設計ですね。
 ただ私の推しカプはゲイブ←イザベルです。よろしくお願いします。
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