Red Notebook 『アーロと少年』時の川をさかのぼれ 忍者ブログ
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ディズニーとか映画とか。All I can say is this: listen to me. My name is Raito. That is not my real name.
2024年11月22日 (Fri)
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2016年03月18日 (Fri)


あらすじ:川をたどっておうちに帰ります。

一言で言うとすっっっごくヘンな映画でした。(面白くないという意味ではない。)
今までピクサーで一番変な映画はカーズだと思っていたんですが、カーズ以上に変な映画かも…。



どこが変かって、
① 恐竜が隕石の衝突によって絶滅しなかった
② それによって恐竜と人間が同時代に存在している
③ さらにキャラクターは主に恐竜だが話は西部劇である
という、設定だけで3重くらいのツイストがあるんですよね。
特に③の「恐竜で西部劇をやる」ってところが一番不思議。オープニングタイトルからカントリー調の音楽が鳴り響き、オーソドックスな父と息子の物語、厳しいフロンティアの生活、牛を駆るカウボーイ……もといティラノサウルスたち。

製作時に監督交代劇などのドタバタがあったゆえか、作品としてはかなり歪なのですが、むしろその歪さが一番の魅力になっているのかも。『インサイド・ヘッド』という非の打ちどころの無いくらい頭の良い作品の後なので、「まあピクサーだし感動するし映像も綺麗だけど予想できる範囲内」に収まるよりは、これくらいワケわからんことやられた方が潔くて良いです。


「恐竜」「古き良き西部(劇)」と、設定からして「もはや失われてしまったものへのノスタルジー」が溢れている本作ですが、もう一つこの映画が持っているんじゃないかと私が思っているノスタルジーがあって、それが「古き良きアニメーション」なんですね。


……「絶滅しなかった恐竜と人間の子供が出会って友情を育むアニメ」というプロットを聞いて真っ先に「恐竜大行進(We’re Back! A Dinosaur Story)」を思い浮かべたというのもあるんですけど、それは置いておいて。


今回、背景が実写と見まごうほどの力の入れようで、スクリーンに映し出される雄大な自然は息をのむほどです。エンドロールでスタッフのクレジットと共に背景のみを映すところからも、ピクサーの自信のほどがうかがえます。
(ちなみに、監督のインタビューによるとこの「雄大な自然が織りなす背景」へのこだわり自体もジョン・フォード『捜索者』やデヴィッド・リーン『アラビアのロレンス』などの「古き良き映画」へのあこがれなのだとか。)

それほどまでにリアルな背景に比べて、キャラクターはかなりデフォルメがキツく、特に恐竜たちは見るからに「アニメっぽい」シンプルなデザインになっています。(実は見る前はこのキャラクターデザインが凡庸なのが不満でした。)
そのため、あまりにもリアルな背景から「アニメちっく」なキャラクターたちはとても浮いて見えてしまいます。
しかし、これが意外にも「昔のアニメっぽさ」……、つまり、水彩画の背景から、セルに描かれたキャラクターたちが浮き上がっているような感覚を覚えさせるんですよ。


あともう一つ「昔のアニメっぽい」と思ったのが、ネットでも話題になっているアーロとスポットが発酵した果物を食べてトリップしてしまうシーン。
「何の脈絡もなく」「本編とは一切関係なく」「映画の構成を考慮してもそこだけブッ飛びすぎてて」「そのシーンが終わってからは誰もそのことに触れない」……こ、これはまさに


「タラコ唇ワニタイム(Big Lipped Alligator Moment)」だーーーー!!!


※「タラコ唇ワニタイム」については↓の動画(8:10~)を参照のこと。

肝心の話のテーマである「アーロが自分の恐怖と向き合う」という部分ですが、「少年が男になる」話としてはマッチョイズムが鼻に付くレベルのところをギリッッギリのところで回避していたとは思いますが、やはり同系統の話ならば「ヒックとドラゴン」の方が数段クレバーだったので特に言うことはありません。

あとは「足跡」の使い方は面白かったですね。足跡は生き物の痕跡であると同時に信頼の証なんですね。だから悪い奴は足跡がつかないし、足跡の無いひとは……。

※※以下、オチをネタバレしています。未見の方は注意※※







「アーロと少年」は見ている間そんなにノレないまでも、「まあこういうのもアリかな」程度に思っていたのですが、この話のオチがどうしても好きになれないんですよ。
「リロ&スティッチ」で「異質な者同士でも家族になれる」話を語り、「アナ雪」でエルサが最終的に国に戻ってきたのを描いた後の時代で「まあでも最終的には違ってる者同士は別々に生きてた方がいいよね」ってメッセージは正直、そこはさあ、そんなとこまで遡らなくていいよ!!!2016年だよいま!!!!って思ってしまいました。
スポットが自分の同類を探し求めていて、人間に会ったとき辛いながらも自分からアーロにお別れを言おうとする…っていう流れならともかく、アーロと一緒に居ようとするスポットを押し返してまで「同類と一緒にいるのが家族、幸せ」ってなにそれ。おかげでエンドロールの家族の丸でドヤられてもぜんぜん感動しない!
こういう展開にするならせめてスポットとアーロが一緒に居たいけど一緒は暮らすにはいろいろと不便になるっていう伏線を張っておくとかさあ……ほんとせめてさあ……


そしてたぶん、私のこんなモヤモヤを晴らしてくれるのが「ズートピア」だと思うので、来月の日本公開を楽しみにしておきましょう。「ズートピア」サイコー!!!(フライング)



☆オマケ☆
短編の「サンジャイのヒーローチーム」良かったですね~。
アメコミヒーローもののアクションに静謐を加え、洗練された音と映像。劇場に響く鐘の音があまりに心地よくて、それだけで泣いてしまいそうなくらい。
ここ最近のディズニーorピクサーの短編映画で「男女が出会って恋に落ちる話」が多すぎて食傷気味なので(それもあって「南の島のラブソング」にはつらく当たってしまったとこがあるので)もっとこういう短編が見たいです。



参考:How Pixar’s Good Dinosaur Became a Love Letter to Hollywood’s Golden Age

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