ツイッターで評判が良く気になっていたのですが、「『ガタカ』好きな人は好きだと思う」という情報で予告編も見ないままに飛び込んできました。(ガタカ好き)
ハインラインの小説が原作なので、SF好きの方からは注目度高かったのかな?
結論から言うとこれめっちゃ好き!!!!めっちゃ好きなやつ!!!ってめちゃくちゃテンションあがりました。
あらすじ:ある男がバーテンダーに語った、奇想天外な彼の人生とは……。あとタイムスリップ使って爆弾魔を止めるよ!
ネタバレはありません。たぶん。
あらすじとポスターだけだとSFアクションのように見えますが、実はかなり地味な作品。
物語のほとんどのシーンは、バーで二人の男が会話をしているだけです。
けれどもイーサン・ホークとサラ・スヌークの演技、美術の美しさでまったく退屈しない。
ロングコートに中折れ帽の男がヴァイオリンケースの形のタイム・マシンで旅をするという姿だけでもうロマン!!超ロマン!!
原作の邦題「輪廻の蛇」からも分かるように(?)、タイムパラドックスをテーマにしたお話です。
一度結末を知ると、「なるほど!」と思わせるセリフがいくつも潜んでいて、二回目以降はそれらを探すのも楽しい。
二転三転する驚くべき物語なのですが、物語の仕掛けだけなら、きっと序盤~中盤で気が付く人も多いはず。
(ちなみに私は恐ろしく察しが悪いので、見事に次々と明かされるどんでん返しに「ウソ~~!?」となっておりました。単純!)
けれども私がノックアウトされたこの映画の魅力は、物語の構造を超えたところにあります。
たぶん、この世界で孤独や生きづらさを抱えている人なら、この主人公の姿に涙せざるを得ないと思うんです。
ずっと周りの人間のことが嫌いで、自分自身のことが嫌いで、長いこと鏡を見ていなかった人がようやく自分の姿を見たときの表情。
「こんな顔だったのか。綺麗だ。」とはにかむ顔。
自分の拠り所を何もかも失くした女性が、挨拶の練習をするシーン。
「こんにちは。私の名前はジェーン。」「こんにちは。私はジェーンよ。」「こんにちは。私の名前は……」
何度も繰り返される、あまりにも、あまりにもありふれた言葉に込められた計り知れない悲しみ。
けれどもこのお話は切なく、そして一見アンハッピーエンドでありながら、決して見終わって絶望的な気持ちにはならないのが好きなところです。
途方もない孤独に茫然としつつ、しかしその孤独こそが自分を自分たらしめているという、誇りにも似たきらめき。
これは圧倒的な孤独の中で過去に惹きつけられながら生きる私の、そして寂しさに涙を流しながらも同時にやっぱりその孤独を愛している貴方のための、物語なのだと思います。